外国人が東京に来て驚くことの一つは電車でしょう。先ず会社が違う路線が多くて複雑です。パリはメトロ、RER、トラムだけでシンプルなのとは大違いです。中心部はJRに加えて、東京メトロと都営地下鉄の二つの地下鉄ですが、JRの山手線の各駅から多くの民営鉄道が郊外に向けて延びています。それらが相互乗り入れをしているので、乗り換えなければならなかった昔に比べると便利になりましたが、乗っていると知らないうちに二つや三つの違う会社の路線を乗ったことになり料金も高くなります。パリのメトロの単一料金に比べると料金は高いです。
最近はSUICAなどの自動支払いカードが普及していて大変便利です。パリのメトロのように単一料金なら仕組みは簡単ですが、東京の電車は行き先によって料金が違うし、違う会社に乗り換えたものも合算しますから、仕組みは複雑を極めます。更に乗降客が極めて多いので、瞬時に決済できないと改札口が人で溢れてしまいます。この難しい要素を解決してSUICAなどの自動支払いカードを開発した技術は誇るべきものです。更にはSUICAで自動販売機や店で買い物もできます。
乗客の便利を考えて色々親切な案内があります。ホームには次の電車が今どこまで来ているかがわかる案内があります。ホームに降りると主な建物へ行くにはどの出口かの案内があります。どの駅までは何分かかり、その駅の階段・エスカレーターやエレベーターがどこにあるかがわかり、そのためには何両目に乗ると便利かという表示があります。これらの表示は最近ではホームだけでなく、車内の画面でも表示しているものがあります。
安全に特別の配慮をしているのも特徴です。最前の車両に乗り、運転手の様子を見てください。信号を確認した際など、声を出して、また指差しをして、確認を確実にしています。子供っぽく感じるかもしれませんが、目で確認したというだけより確実に確認することが可能です。ホームで待っていると、「電車がまいります。危険ですので黄色い線の内側でお待ちください。」と案内されます。自己責任の考えが強い欧米ではうるさいといわれるかもしれません。エスカレーターでも「黄色い線の内側に乗ってください。」という表示やアナウンスがされます。履物が巻き込まれる事故が発生したからです。「ホームに傾斜がありますのでご注意ください。」という注意表示が増えました。車椅子やベビーカーが動き出してしまうケースが発生したからです。因みにこの傾斜は雨などの水捌けをよくするために、見ただけではわからないくらい緩やかに付けているそうです。
東京とパリの電車を比べると、路線がシンプルで分かりやすい、単一料金でかつ安いという点でパリの方が良いが、乗客の便利や安全を考えて常に改善をしているという点が東京には見られるといえます。全体のグランドデザインを考えてスタートするフランス人に対し、(JRと多くの民営鉄道のように)個別に勝手に始めたものを後で改善を積み重ねる(相互乗り入れやSUICAなど自動支払いカードの共通化)ことにより発展させるのが得意な日本人の特徴が電車事情にも見てとれます。
電車内の風景も変わってきました。1時間ほど通勤にかかるのは東京では普通のことですので、通勤時間は貴重です。疲れて眠っていたり、目を閉じて休息したりしているひとが多いです。電車の中で寝ているひとがいるのは安全だからで欧米人には驚きのようです。座って眠るひとだけでなく、立ったまま眠っているひとも偶にいます。夜飲み過ぎて吊り革にもたれて寝たり、満員で身動き取れなければ周りのひとに寄り掛かって寝たりするのです。30年前の電車で何かしているひとといえば新聞や本を読むのがほとんどでした。新聞は広げると隣のひとの邪魔になるので一面を縦に二つに折ってスペースを取らないようにして読んでいました。20年前はウォークマンで音楽を楽しむひとがそれに加わりました。その後カセットからCDへ、それからi-PODなどに発展してきました。10年前頃は携帯電話でメールをしているひとが増えました。今は携帯電話でメールをするだけでなく、ゲームをしたり、更にはテレビを見たりするようになりました。
フランスのビジネスマンの皆さんも東京に出張する際はタクシーでなく、電車に乗ってみてください。乗っているひとの観察も面白いですし、システムの違いなどにも注意してみてください。
第十回 :: フィットネスクラブ事情
第九回 :: 節電生活
第八回 :: 大震災から学んだこと
第一回 :: 日本の電車事情
第二回 :: 日本の最新トイレ事情
第三回 :: 地震に遭遇したら
第四回 :: 地震と原発
第五回 :: 地震、その後の生活―1#
第六回 :: 地震、その後の生活―2#
第七回 :: 地震、その後の生活―3#